
ギフトシード、癒しと和解
2021年5月5日
かものはしプロジェクト
インド事業ディレクター 清水友美
2019年7月に森川有理さんにインドにお越しいただき、Healing Between Worlds™ から学んだ「ギフトシード」の旅を行いました。かものはしプロジェクトは2012年からインドの人身売買の問題解決を支援しており、近年は特に、人身売買に巻き込まれながらも、その強烈な苦しみを生き抜いてリーダーとして成長していく事業に重きを置き、エコシステム全体のリーダーシップ育成と、反人身売買システム構築を重点的に支援しています。多くの皆さまが想像される通り、人に「売られる」という行為は、私たちに大きな痛みをもたらします。売られた「私」は、様々な形で人間としての尊厳を奪われ、様々な形態の暴力を受けます。自分がとても大事に思っている人、守ってもらいたいと願っていた人から、適切な保護や愛情を受けられず逆に暴力を受けた「私」は心の中に大きなトラウマを抱えます。そしてそのトラウマを抱え、必死に人生を取り戻そうとしているサバイバーたちとともに歩んでいるソーシャルワーカーたち。そんな彼らと、私自身がシードワークを通じて体験した深い癒しの時間を作り出したい。
そんな願いに共鳴してくださったゆりさんと、HBWのWindEagleさん及び関京子さんが力を貸してくださり、2019年7月に3日間のシードワーク・ワークショップが開催されました。開催にあたり、人身売買被害を生き抜いてきたサバイバーたちの心のケアを長年にわたり行い、サバイバーリーダーシップ育成のパイオニアであるUma Chatterjee氏に共催をお願いするとともに、何かのきっかけでリーダーたちの心の状態が悪化した場合に備え、Pompi Banerjee氏にアシスタントに入ってもらいました。また、私たちかものはしの事業を一緒に作り、主導してくれているRoop Sen氏にたくさんの問いを投げてもらうことで、このワークショップを意義あるものにすることができました。このように、このワークショップにはたくさんの方々の想いと願いとエネルギーが込められていたことを、私は後に痛感することになります。3日間は想像を超えた時間でした。およそ2年たった今でも、あの時の空気感と参加者の表情をありありと思い出すことができます。あまりにソワソワして異常にハイだった最初の夜。
3つのレベルの傾聴についてのゆりさんの講義にじっと耳を傾ける18人。傾聴の練習の時にパートナーの話に深く耳を傾け、「自分以上に最悪な経験をした人なんていないと頑なに信じてきたけれど、もっと大変な思いをしていた人がいることを知った」と音もなく涙を流し続けたサバイバーリーダー。持って生まれたオリジナルのギフトシードについて語りながらも、気づくと、誰にも話せず長いこと自分の中に封印してあった悲しい記憶を、泣きながら共有してくれたサバイバーリーダー。それを真剣に受け止め、ホールドし続けた場のしなやかな強さ。「歴代の男性たちから受け取ったギフトなんてひとつもない。私たちが歴代の男性たちから受けてきたのは差別と暴力だけだ」とたくさんの感情とともに噴出したcollective voice。ゆりさんが急遽計画を大きく変更して作ってくださったスペースで出てきた自分の絵をみながらつぶやかれた、内なる声「いつか殺したいと思ってた」。テーブルクロスの陰に隠れてパートナーに肩を抱かれながら号泣するソーシャルワーカー。みんなの希望と思いをのせて、夕方の空をのぼっていく風船たち。途中で自分の心の中にあふれた声をホールドしきれなくなって挙動が不安定になったサバイバーリーダーに、そっと寄り添い子守唄を歌うように何かをささやくUma。げっそりと疲れてしまって座り続ける気力もなくなり、寝そべりながら一生懸命ストーリーに耳を傾ける(または眠っている)サバイバーリーダーたち。私の夢の種の話を聞いた後、私の痛みを見事に見抜き共感を差し出してくれたサバイバーリーダー。すべての瞬間が、私の頭の中で全く色あせることなく存在しています。
この記事を寄稿するにあたり、参加者にとってこのワークショップにはどんな意味があったのか、それぞれが再発見し、言霊を与えた「種」たちは、あれからおよそ2年たった今、どんなところにいるのかを知りたくて、インタビューをさせてもらいました。あたかも魔法の絨毯に乗っているかのように、「今」と「あの時」を自由に行き来しながら、あのワークショップで植えられた「種」は確かに、癒しというプロセスを経てエネルギーを成長させているということを、インタビューを通じて実感しました。とある人は、あのワークショップを機にまとっている空気感ががらっと変わったことに無自覚でしたが、私がそれを伝えると、自分の内側で起きた癒しを共有してくれました。幼いころに両親に先立たれ、何もしてもらえなかったことへの悲しみ、恨み、親戚の心ない言葉に傷ついた心が、彼女をこれまで「戦士」へと掻き立ててきましたが、あのワークショップで、実は自分は死んでしまったお母さんやお父さんからたくさんのギフトを受け取っていたのだと気づいたそうです。それに気づいてからは、他者から批判的な言葉を聞いても、どうしてこの人はそのことを私に言ってくるのだろう?と好奇心を持ち、相手に尋ねることができるようになったと言っていました。またとある人は、あのワークショップで自分が歴代の女性たちから受け継いだ種が、このコロナウイルスの第2波(これを書いている5月5日時点で、インドの一日当たりの感染者数は40万人に達しており、一日当たりの死者は3000人を超えています)の毎日を乗り切るエネルギーを脈々とくれていると教えてくれました。歴代の女性たちから彼女が受け継いだ「すべてを束ねていく力」。いつもはなかなか発揮されないけれど、コロナの感染者が増え、既往症を持つ家族が不安になっていく中で、彼女はこのすべてを束ねていくエネルギーを自分の内側から感じ、全員は助けられないかもしれないけれど、次々と自分にできること、戦略を考え、実践するエネルギーが自分の内側に沸いてきていると、目を輝かせながら共有してくれました。また、とある人は、あのワークショップを機に旦那さんと真正面から向き合い、自分の中で歴代の男性たちから受けてきた負の側面が浄化され、癒され、それぞれの人たちにも自分と同じようにギフトシードが宿っていることを受け入れられるようになったと教えてくれました。家族の中で起きた出来事を機に、自分が長年追いかけてきた夢をあきらめなければならなくなったと、インタビューの冒頭で涙をたくさんこぼしていましたが、種を活性化するプロセスの中で、実はそれは夢が広がっただけであって、これまでの夢と、今家族のなかで起きていることを統合していくことがもしかしたら道なのかもしれないと教えてくれました。
ギフトシードが、私たち一人一人の中で活性化され、私たちの周りにパワースポットを作り出す時、それは美しい、力強いエネルギーを放ちます。このコロナウイルスの脅威を前に、「もうダメかもしれない」という内側からのささやきが幾度となく聞こえます。それでも、シードワークを一緒に受けてきた彼女たちと一緒に、私は、夢を実現させる方のエネルギーに心を込め、世界に、自分の大好きな人たちに向かってエネルギーを送り続けています。私たちがそうすることができている裏側には、あの時、たくさんの人たちが想いを込め、エネルギーを込め、願いを込めて、一緒にあの場を作りだしたということがあり、だからこそ、それぞれのギフトシードが今エネルギーを得て花開いているのだろうなと確信しています。

